ウェアラブル脳波計を用いて,実環境下におけるヒトのワークロードの評価に関する研究を行った.ヒトのワークロードとは,どの程度脳が使用されているかを表す指標である.ワークロードを知ることで,特定の作業や,物事,サービス,行動がどの程度,ヒトに対して負荷を与えているかを知ることができる.本研究では,このワークロードを評価するための指標として,聴覚定常状態応答を用いた.最終年度は,この聴覚定常状態応答を脳波データから正確に抽出するための信号解析法に関する研究に携わった.
脳波計測信号には,脳活動を反映する脳波成分とノイズとなるアーチファクト信号が混合している.計測信号の中から,脳活動に由来する聴覚定常状態応答を明確に抽出することは,ワークロードをより正確に評価することにつながる.最終年度は,この脳波信号とノイズ信号の分離に関する信号処理技術に関して解析,評価を行った.具体的には,独立成分分析といったブラインド信号源分離に関する方法を比較検討した.その結果,独立成分分析のなかのInfomaxアルゴリズムを用いた方法が比較検討したなか,もっとも聴覚定常状態応答を強く抽出することができた.この成果は,ヒューマンインタフェース学会論文誌に採択された.
本研究は国立研究開発法人情報通信研究機構の倫理委員会および パーソナルデータ取扱研究開発業務審議委員会の承認を受け,すべての参加者に対して実験内容について事前に十分な説明を行った後,参加の同意を得た上で行われた.すべての実験は,ヘルシンキ宣言に記載された倫理基準に従って実施された.
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