研究課題/領域番号 |
16K21689
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
源 健宏 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 協力研究員・特別研究員 (40611306)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ワーキングメモリ / 前頭前野 / 個人差 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,我々の高度な知性を支えるワーキングメモリの心理学的・生物学的仕組みを,ワーキングメモリ容量の個人差の観点から解明することを目的としている。本研究は,特に,前頭前野の階層的構造に着目し,その構造の違いがワーキングメモリ容量の個人差の主要な要因であることを特定することを目指している。 ワーキングメモリ容量とは,限りある認知資源を効率的に利用する能力を意味し,この能力が高い個人ほど,高度な認知制御を必要とする課題を上手くこなせることが知られている。実験心理学的アプローチによるワーキングメモリ容量の行動的特性に加え,認知神経科学研究により,前頭前野の外側部がワーキングメモリ容量の個人差に関与することが明らかにされている。しかしながら,前頭前野のどのような神経特性が,ワーキングメモリ容量の個人差を説明するのかについては十分な検討がなされていない。 本研究では,上述のように,前頭前野の階層的構造に主眼を置き,ワーキングメモリ容量の個人差を生み出す神経メカニズムの解明を進めている。初年度は,脳領域間の結合を評価する手法として知られるDynamic Causal ModelingとPsychophyioligical Interactionを用いて,ワーキングメモリ容量の高い群(高スパン群)と低い群(低スパン群)を対象とし,前頭前野内の機能的結合の差異を検討した。また,これまでの神経科学的知見をレビューすることで,ワーキングメモリ容量の個人差と密接に関わると想定される神経メカニズムの有力候補を提唱し,その論文は,Current Directions in Psychological Science誌にアクセプトされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
共同研究者とともに集積したデータを対象に,多変量解析手法を用いることで,ワーキングメモリ容量の個人差の基盤となる神経メカニズムの特定を順調に進めており,当初の計画通りに研究が進展している。また,心理学分野において強い影響力をもつCurrent Directions in Psychological Science誌に,研究代表者らが提唱したワーキングメモリ容量の神経メカニズムのモデルがアクセプトされたことは,当初の計画以上に研究が進んでいることを示していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
進行中の神経結合分析を進めることで,ワーキングメモリ容量の階層的構造モデルの検証を進める。また,理論の一般化を図るため,現在の言語性課題に加え,視空間性の課題遂行中の脳画像データを撮像し,同様の結果が得られるかを確かめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初実施を予定していたfMRI実験に先立ち,本研究課題に関連する過去のデータを再解析し,ターゲットとする脳活動に対して高いセンシティビティを持つ課題の作成を進めた。しかしながら,再解析に予想以上の時間を要したため,新たなfMRI実験の実施に至らず,そのため,支出を予定していた人件費等に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ターゲットとする脳活動を効率的に引き出す課題の開発を急ぎ,十分な統計的効果量をもつデータの収集を進める。
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