研究実績の概要 |
イメージング・フローサイトメーター(FlowCAM:Flow Cytometer and Microscope)を用いたメイオファウナの迅速解析法を確立した。2015年3月に東北海洋生態系調査船「新青丸」によるKS15-01次航海において岩手県大槌町沖で採集したサンプルの内、メイオファウナの生息密度が異なると予想される水深の異なる4つの測点(水深65 m, 303 m, 1,064 m, 1,677 m)の堆積物サンプルを用いて、本技術の有用性を検証した。コロイド状シリカ溶液に堆積物を懸濁し、遠心することで、生物を堆積物粒子から分離した。この分離した生物をFlowCAMに投入し画像を取得し、得られた画像を高次分類群毎に計数した。また、FlowCAMでの観察後に再捕集したサンプルを顕微鏡下で観察し、高次分類群毎に計数した。両者の作業時間を比較すると、検鏡作業はどの試料についても数時間だったのに対して、FlowCAMを用いた作業は数10分程度であった。また計数された個体数については、メイオファウナ全体、及び深海メイオファウナ群集で優占する線虫類、カイアシ類において、顕微鏡下での計数とFlowCAM画像による計数は有意に相関していた。これまでのメイオファウナ研究の伝統的な手法では、小さな個体を実体顕微鏡下で観察するという時間の掛かる作業が必須であり、複数の観測点に及ぶ長期的な個体群動態を把握することが困難であった。本研究で開発した新規の手法は、東日本大震災による東北沖深海メイオファウナ群集への影響や、撹乱からの遷移・回復を評価のような、長期的なモニタリングを行う際に有用だと考えられる。
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