前年度までに確立したイメージング・フローサイトメーター(FlowCAM:Flow Cytometer and Microscope)を用いたメイオファウナの画像の取得手法をオープンアクセスの国際雑誌で公開し、手法の普及を図った。また、同手法により取得した画像データを迅速に分類するために、機械学習・深層学習による自動分類の実現を目指した。学習に必要な教師データを蓄積し、NVIDIAが提供するDIGITS、及びNECが提供するRAPIDを用いて、深層学習による画像データの分類を試みた。その結果、2つの深層学習システムとも深海メイオファウナ群集で優占する線虫類とカイアシ類の2つの分類群の分類は約98%と高い精度での分類に成功した。学習に用いる画像データの加工方法を検討し、他の分類群も分類できるような学習データセットの構築を進めている。 東北地方太平洋沖地震後の三陸沖日本海溝斜面のメイオファウナ群集の解析も行った。光学顕微鏡を用いた底生カイアシ類の詳細な形態観察の結果、地震後の全ての測点で2011年から2012年にかけての群集組成の変化は見られなかった。さらに、地震前の当該海域の群集組成と類似していると考えられる千島海溝周辺域の群集組成と比較すると、両者の深度変化パターンに有意な差は見られず、地震などの撹乱が頻発する三陸沖日本海溝斜面では、もともと撹乱に強い分類群が存在していたと考えられた。また、本内容を国際雑誌Limnology and Oceanographyで公開した。
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