研究課題
若手研究(B)
ツキノワグマの個体群動態に堅果類の豊凶が与える影響について検証した。不作年の秋にはメスでも出生地(春から夏の行動圏)から遠く離れた場所にまで移動して食物を探し回るが、秋終盤になると再び長距離を移動して出生地付近に戻ってきてから冬眠することを明らかにした。母系の血縁個体が近くに暮らす慣れ親しんだ土地に戻って冬眠、育児を行うことで繁殖成功率を上げている可能性がある。また、メスの歯のセメント質にできる年輪の幅から繁殖(育児の成功)履歴を推定する手法を開発した。
野生動物保護管理
2000年代に入り気候変動に伴うと考えられる堅果類の豊凶の周期パターンの変化が観測されている中、堅果類の豊凶とツキノワグマ等の大型哺乳類の個体群動態との関係を正しく理解した上で、農作物被害や出没対策を行わなければならない。本研究はこれまで難しかったツキノワグマの繁殖履歴の推定手法を確立するなど、今後のクマ類の科学的な保護管理に大きく貢献する成果を得た。