受付期間のある待ち行列モデルについて,各客が目的(ここでは自身の期待待ち時間の最小化)をもち,いつ到着すべきかの意思決定を行った結果,どのような到着時点分布が発現するのかについて,待ち行列理論にゲーム理論の考えを融合した待ち行列ゲームの理論解析を行い明らかにした.得られた均衡における到着時点分布の形状は,実生活でも度々観測される形状であり,待ち行列ゲーム解析の現実問題への応用可能性を十分に示唆する結果であることが分かった.数値実験から,サービス時間分布のばらつきが大きいほど,初期時刻へ客が殺到しうることも示された.最終年度の研究成果は以下の通りである. (1)待ち行列ゲームのプレーヤー数が不確実なゲームとしてのモデルの精緻化:ここで対象とする待ち行列ゲームのように,客の母集団が不確実である待ち行列ゲームについて,先行研究ではモデルの記述方法に曖昧さを含んだまま議論が進められてきた.これは,モデルの解釈だけでなくその解析結果を読み違いかねない.そこで,対象とする待ち行列ゲームについて,ゲーム理論の枠組みに従い,プレーヤー数が不確実なゲームとしてモデルの精緻化を行い,議論の展開を明確にした. (2)シミュレーションモデルの構築および理論解との数値比較:待ち行列ゲームにおける解析結果の現実問題への応用のためには,シミュレーション実験による数値比較が重要である.ここでは,各客が自身の経験に基づいて待ち時間を最小化するように到着時点分布を逐次修正するシミュレーションモデルを提案し,理論解との数値比較を行った.シミュレーションから得られる到着時点分布は厳密には理論解と一致しないが,初期時刻における到着の確率が高いこと,さらに,サービス時間のばらつきが待ち時間に及ぼす影響,などは理論解と傾向が一致することが示された.これは本研究で得られた結果の現実問題への適用可能性を示唆している.
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