研究課題/領域番号 |
16K21705
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研究機関 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター) |
研究代表者 |
小坂 大吾 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 准教授 (50648904)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 残留応力 / ホール係数 / ホール効果 / 非破壊評価 |
研究実績の概要 |
本研究はホール効果を用いて電気伝導性のある物質の表面の応力を非破壊的に測定することを目的としている。ホール効果が電荷キャリアの密度と相関があることを利用している。2年目である平成29年度は以下の二つのことを行った。 一つ目は、キャリア濃度が応力以外にも影響を受ける可能性を考慮し、ホール係数の応力依存性における熱処理の影響について検討を行った。現時点で明確な結論を得られていない。なぜなら、実験ではホール効果の応力依存性に有意義な差を得ることができなかったからである。熱処理方法について専門家の意見を仰ぐとともに、金属顕微鏡等を用いて試験体の結晶構造についてより詳細な調査をし、実験方法について再確認しているところである。 二つ目は、計画時の予定にはなかったが、実機適用を視野にベース電流の周波数の高周波化に取り組んだ。現在、試験体は厚さ0.1mm程度のシートを用いている。これはホール電圧が試験体の厚さに反比例するからである。例えば0.1mmの磁束密度1T、ベース電流1Aの時、ホール電圧は約0.87μVである。本研究の最終目標はタービンブレード等の表面応力であるからその厚さは10mm以上ある。これはホール電圧が1/100以下になり、ホール電圧の応力依存性の測定がより困難になることを意味する。そこで、ベース電流の周波数を高くして表皮効果でもって試験体表面のベース電流密度を大きくすることでそれを補おうという戦略である。高周波になると電線のインダクタンス成分が大きくなる。これは測定には不利益を与える。我々の知る限り先行研究のベース電流の周波数は最大数kHzであった。しかしながら、受動素子のみで構成するシンプルな回路を試験体とロックインアンプの間に入れることで、ベース電流の周波数を100kHzまで高くすることができた。これはInconel 718であれば表皮厚さ1.75mmに相当する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた熱処理がホール効果の応力依存性に与える影響について確信の得られる結果が得られていない。しかしながら、実機適用に向けてベース電流の高周波化には道筋が立ったことから、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
チタン合金のホール係数の測定にまだ成功していない。これは我々がこれまで取り組んできた金属よりホール係数が小さいことによる。これまでの実験からTi6Al4Vのホール係数は銅のホール係数の少なくとも1/50以下であると予想しているが、我々の知る限りその値は公開された文献上で明らかになったことはない。計画では最終年である平成30年度でTi6Al4Vのホール係数の測定を目標にしている。それを達成できるよう、実験装置の見直しによりSN比の向上に取り組む。また、現在使用しているチタン合金の試験体の厚さは0.1mmである。より薄膜の試験体を入手することで測定ができないか検討している。さらに、実機適用を見据えてベース電流の高周波化、具体的には1MHzとすることに取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予算の不足により、計画時に予定していた高周波数対応ロックインアンプが購入できなかったため。 (使用計画) 次年度の予算と合わせてロックインアンプの購入に充てる。
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