研究課題/領域番号 |
16K21711
|
研究機関 | 兵庫県立人と自然の博物館 |
研究代表者 |
大平 和弘 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員(移行) (90711169)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 習俗行事 / 水辺空間 / 文化的景観 / 社会構造 / 海岸形態 |
研究実績の概要 |
本研究では、Step1~Step4の段階に分けて、水辺の習俗行事の空間的・社会的変容パターンを解明する計画としており、平成29年度では、Step2-bの一部である、習俗行事の土地利用や空間形態、空間の利用状況等の実態の解明、Step3-1aの一部である、過去の習俗行事や水辺の姿が写る古写真等資料の収集整理、Step3-1 b土地利用や空間形態の変容、Step3-1c水辺の自然環境の変化と習俗行事との関係の把握を行うことを中心とした。 具体的には、平成28年度現地調査において海岸部の埋立による空間変容と習俗での利用形態の変化などの知見が得られた、愛媛県松山市高浜の神輿の禊行事において、過去の習俗行事や水辺の自然環境の変化についての資料の収集と祭祀者へのヒアリングを実施した。また、29年度に習俗行事に関する資料が得られた山口県柳井市大畠の神輿の禊行事において、神輿の追跡調査を行い、海岸の空間形態と習俗行事での利用状況を把握した。さらに保存会への予備ヒアリングを実施し、過去の習俗行事の状況や海岸の空間変容に関する知見を得ることができ、Step3-2水辺の習俗行事の文化的景観に関する社会構造変化の解明に向けての下準備が進んだ。加えて、山口県柳井市大畠では海岸の大規模な防災整備や、習俗行事の運営組織が世代交代等の移行期により、行事が一時途絶え、砂浜造成地において近年行事が再開されたことなど、水辺の習俗行事における文化的景観の再生につながる知見を得ることができた。 今後は、Step3-1cで収集した水辺の自然環境の変化に関するデータの整理・分析と、Step3-2のヒアリングを交え、総合考察することが課題であると認識された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画書では、文献調査にて習俗行事のタイプ別(船・浜渡御型、神輿・地車禊型、垢離取り型、藻狩り・採捕型、虫送り・祓型など)に分類した上で現地調査を実施することを目的としていたが、平成28年度に文献や資料が公開されていないなどの想定外の事態にてやや遅れが生じたため、29年度は文献による情報収集が可能な場所から随時現地調査を行うこととした。また、各対象事例の比較検討がしやすいよう神輿の水辺空間の利用や禊神事に対象を絞り込み、より深く対象事例を追求する方法へ転換した。さらに、過去の景観や習俗行事の資料の整理同定作業の人員を確保し、資料整理の効率化を図った。そのため、概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、Step3-1cで収集した水辺の自然環境の変化に関するデータの整理・分析を行い、水辺の環境変化と習俗行事との関係について考察すること、Step3-2にて習俗行事の運営組織へのヒアリングを通じて、習俗行事の運営体制、水辺や習俗行事に対する認識や思想、文化的景観を支えるコミュニティや地域の生業等の社会構造を明らかとすることを推進する。そして、最終段階Step4では、各事例の知見を比較し、空間や社会構造の変容パターンごとに課題や解決の可能性を明確化し、土地利用の適正化や空間の維持管理といった空間管理、保全に向けた運営体制や地域の生業やコミュニティの再生といった社会構造、実効的な保護施策のあり方等について考察を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、平成28年度から収集したデータや資料の整理にエフォートを割いたため、現地調査の旅費が抑えられ、次年度使用額が生じた。平成30年度では、計画書のStep3-2にあたる運営組織へのヒアリング調査を本格的に実施し旅費が発生すること、データの積み残しである水辺の環境変化に関する資料の分析に用いる消耗品等により、執行予定である。
|