本研究では、Step1~Step4の段階に分けて、水辺の習俗行事の空間的・社会的変容パターンを解明する計画としており、本年度では、Step4における変容パターン間の比較を見越したStep3の土地利用や空間形態や社会構造のヒアリングによる補足を行った。 具体的には、空間変容のパターンであるA空間保存型、B空間再生型、C空間再生移転型、D空間消失型のうち、Bに該当する前年度台風により祭事が中止となった山口県柳井市の祭事を対象とした現地調査および、ヒアリング調査、Dに該当する岡山県笠岡市の祭事を対象としたヒアリング調査により、環境の変化により砂や礫の堆積状況に変化が生じ、人工的な養浜が行われたこと、集落内の社会構造に大きな変化がみられたが他地域からの担い手育成によって継承している現状が明らかとなった。 また、これまでのA~Dの空間変容パターンの事例を整理した結果、パターンごとに文化的景観の構造に大きく差異がみられ、Aは景観構成要素の変化、Bは景観の基盤、Cは立地環境、Dは土地利用も含めた大部分に継承性の課題を有するなど、文化的景観の継承課題が明らかとなり、保護のあり方について総合考察を行った。
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