本研究では、申請者がこれまで提案したリアルタイム性を考慮した実世界情報の検索をより一般化することで、日常生活空間で起きた出来事(いつ・ 誰が・どこで・何を見て・何をしたか)に対して質問応答できる実世界情報検索システムを構築する。この実世界情報検索システムが実現できれば、「山田さんはいまどの部屋にいるの?」「(さっき失くした)スマートフォンは今どこにあるの?」「(私は)昨晩何を食べたっけ?」「田中さんは食事の後に薬を飲みましたか?」といった実世界の内容を問う質問に解答できるようになり、人・物探しや記憶補助や見守りシステムに役立てることができる。
この情報基盤を実現するため、研究期間全体を通じて以下の研究項目に取り組んできた。①日常生活行動をセンシングしたデータをその内容を表す言語データへ変換する手法の開発、②日常生活を表す言語データに対して自然言語による質問を受けつけその解答を返すことができる質問応答システムの作成、③シミュレーターを用いた実世界質問応答データセットの作成。
昨年度まで取り組んできたニューラル質問応答モデルは高精度な実世界質問応答が可能であるものの、モデルが性能を発揮するためには大量の学習データが必要になる。しかし、実世界のデータのラベリングはプライバシーを侵害する恐れがあるため、実世界の質問応答データを作成することは困難である。そこで、プライバシーを侵害せずに質問応答モデルの学習データを作るため、本年度はシミュレーターを用いた学習データの作成について取り組んだ。シミュレーターとして人の日常生活を模倣するゲームを使い3家屋・9世帯分の日常生活に関する質問応答データセットを作成した。
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