本研究課題は、消費者の一部がナイーブな(システマティックなバイアスを持っている)場合における、市場理論及びその効率性への理解を進展させることを目的とした。今年度の主な研究実績としては、ナイーブな個人の理論分析を消費者保護に応用した「消費者保護政策の経済分析と行動経済学」というタイトルの研究成果を和文学術査読誌の『行動経済学』に出版したこと、及びナイーブな個人が戦略的関係の状況にて時間を通じて何らかの未知の変数を学習する際、長期的にどのような結果がもたらされるかについての理論研究を行った成果を“Multi-Player Bayesian Learning with Misspecified Models”(山本裕一氏との共著)というタイトルの学術論文にまとめたことが挙げられる。 並行して、他共著者との各研究プロジェクトをそれぞれ進展させ、そのうちいくつかのプロジェクトにおいて国内および海外のセミナー・ワークショップ・学会での研究報告を行った。今年度はコロナ禍のため、研究報告は国内外を問わず原則としてオンライン、また各共著者との研究プロジェクトの打ち合わせもほぼオンラインのみとなったが、それぞれのプロジェクトにおいて順調な進展を遂げた。特に、自尊心の不安定性について理論研究を行った“Fragile Self-Esteem”(Botond Koszegi氏及びGeorge Loewenstein氏との共著)というタイトルの学術論文は、今年度秋に英文査読誌から改訂要求を受け、今年度末に査読者及びレフェリーからのコメントに対応した改訂版を再投稿した。
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