研究課題/領域番号 |
16K21747
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北川 克己 大阪大学, 生命機能研究科, 招聘教授
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | セントロメア / ヒストン / 染色体安定性 / DNA損傷 / DNA二重鎖切断 / 放射線感受性 / クロマチン |
研究実績の概要 |
セントロメア領域は、塩基配列に依存しないエピジェネティックな分子機構で規定され、そのエピジェネティックマーカーとしては、セントロメア特異的なヒストンH3の一種であるCENP-A タンパク質が機能する。したがって、CENP-Aはセントロメアに特異的なクロマチン構造とその機能を決定する重要な因子と考えられている。近年、このCENP-Aがセントロメアだけではなく、染色体上のDNA二重鎖が切断された部位に局在することが報告された。これは、CENP-Aがセントロメア上とは異なる機能を持っていることを示唆する結果であり、大変興味深い。そこで、我々は、ヒト培養細胞を用いてCENP-Aの細胞内レベルを低下させると放射線感受性が上昇することを明らかにし、それにより、CENP-AがDNA損傷応答において重要な役割を果たしていることを示唆する結果を得ることができた。我々はCENP-AがDNA二重鎖切断部位に局在することによって特異的なクロマチン構造を形成し、DNA損傷応答に必要な蛋白質の局在を促進するという仮説を立てた。この構造がセントロメアにおけるCENP-Aクロマチンと同様であるかどうかは、関心が持たれた。そこで、この仮説を検証し、クロマチン構造を明らかにするために、DNA損傷時特異的にCENP-Aに結合するタンパク質の同定を試みた。細胞にDNA損傷を与えた条件で抗CENP-A抗体を用いた免疫沈降を行い、共沈降して来るタンパク質を質量分析によって同定した。その結果、新規タンパク質が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CENP-AがDNA二重鎖切断部位に局在する分子的機構、未修復のDNA二重鎖切断部位にネオセントロメアが形成されることを検証することについては、研究実行者であるポスドクがラボを去ったこともあり、予定よりも遅れているが、CENP-AがDNA二重鎖切断部位に局在することの機能解析については、新たなファクターの同定など進展を見せている。
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今後の研究の推進方策 |
目的1 : CENP-AがDNA二重鎖切断部位に局在する分子的機構を解明する。 我々は、これまでの研究によりCENP-Aの124番目のリシン(K124)がモノユビキチン化されることがCENP-Aのセントロメア局在に必須であることを明らかにした。さらにCENP-AK124のユビキチン化により、CENP-Aがセントロメア領域に局在するために必要なCENP-Aシャペロン、HJURP蛋白質との結合が強まることを明らかにした。従って我々はまず、CENP-AのDNA二重鎖切断部位への局在がセントロメアへの局在同様CENP-AK124のユビキチン化やHJURP蛋白質との相互作用を必要とするかどうかを調べる。 目的2 : CENP-AがDNA二重鎖切断部位に局在する機能的意義を解明する(仮説1)。 我々はCENP-Aの発現量をsiRNAによって通常の50%まで低下させたHeLa細胞を放射線照射し、コロニー生存アッセイを行ったところ、放射線感受性が上昇しているという結果を得た。この結果はCENP-AがDNA損傷チェックポイント経路やDNA修復経路の活性化に関与している可能性を示唆している。 目的3 : 未修復のDNA二重鎖切断部位にネオセントロメアが形成されることを検証する(仮説2)。以下二つの可能性を調べる。 上記の計画通りのプロジェクトとともに、DNA損傷時特異的にCENP-Aに結合するタンパク質の機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、大阪大学で実験体制を整えることに集中し、購入予定の大型顕微鏡の導入には至らなかった。本年度は、購入も計画しているが、研究の進展によっては、消耗品やゲノム解析関連に受注が増加する可能性もある。何れにせよ、立てた研究計画や、得られた結果を見ながら、研究費の計画的な使用を行う予定である。
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