研究課題/領域番号 |
16K21749
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
横山 英樹 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 特命准教授
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | 細胞骨格・運動 / 分裂期 / 紡錘体 / 染色体分配 / 疾患誘導機序 |
研究実績の概要 |
細胞分裂の進行に関わりうる同定200蛋白質の内、5つ(SART1、Cdc51、他3分子)についてヒト蛋白質に対する市販の抗体を購入し、HeLa細胞抽出液中に含まれるこれらの蛋白質がin vitroで微小管に結合しうるか試験した。いずれも結合し、さらに紡錘体形成で阻害的に働くimportinを加えると結合は阻害された。従って5分子は、微小管への結合を通して分裂の進行に関与している可能性が高く、現在、分子機能を詳細に解析している。 SART1については、組換えSART1が微小管に直接結合し微小管同士を束ねる活性を有することを発見した。ヒト細胞内でSART1は紡錘体極に局在し、中心体のgamma-tubulinなどよりも少し外側に局在することを明らかにした。局在と一致して、RNAi法で細胞からSART1を除くとNineinなど複数の中心体蛋白質が中心体に集積できなくなった。SART1の直接の機能を明らかにするために免疫沈降を実施、中心体形成に重要なCep192を結合タンパク質として同定した。実際にCep192を細胞から除くとSART1は紡錘体極に局在できなくなり、SART1は中心体形成においてCep192の下流で機能することが示された。さらに正常RPE1細胞では、SART1を除いても紡錘体形成などに異常が起こらず、がん遺伝子の過剰発現によるがん化誘導にも耐性を示すことを発見した。以上のSART1の新しい機能やがん治療への可能性を示す論文を投稿した。 一方では、細胞分裂後の核形成に必要な蛋白質VPS72を同定した。VPS72がヒストンバリアントのH2A.Zを染色体に導くことで核形成を誘導することを明らかにし、筆頭著者として論文を発表をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の研究成果を上げ、論文を発表することができた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、実験を行う時間が制限され、必要な外部との共同研究も十分にできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
投稿したSART1に関する論文は、雑誌の編集部より修正して再投稿するよう誘いを受けている。そのため、査読者の要求に応えるよう実験を行い、研究を完成させる計画である。本年度は複数の学生が研究室に加わるため、研究指導を行い、できるだけ多くの同定蛋白質を機能解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前所属研究機関では十分な研究協力者が得られず、外部から研究協力者を募集することもできなかった。さらに新型コロナウイルス感染拡大により、実験できる時間が制限され、学会参加もできなかった。そのため、人件費、物品費、旅費のいずれにおいても次年度使用が生じた。 現所属研究機関においては、細胞培養インキュベーター、蛍光顕微鏡、高速遠心機などの本研究に必要な機器がないため、助成金を使って揃え、研究環境を整備する計画である。
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