細胞分裂に関与しうる蛋白質群を独自に同定し、それらの機能解析により紡錘体の形成機構をはじめ分裂の未知の制御機構を解明している。疾患に関わるRECQL4については、それを発現しない患者細胞が分裂中期に染色体整列異常を起こすの見つけ、それが疾患の原因となる可能性を示した(Yokoyama et al. Life Sci Alliance 2019)。一方、クロマチンリモデリング因子VPS72によるヒストンH2AZのクロマチンへの集積が分裂後の核の再形成に必須であるのを明らかにした(Yokoyama et al. Cells 2020)。さらに18の同定蛋白質をRNA干渉法によりヒト細胞からそれぞれノックダウンし、顕著な異常を示すものを選抜した。最終年度は、ノックダウンすると紡錘体形成が異常になり分裂期にある細胞の割合が増加するSPATS2、WDHD1について解析した。 SPATS2は精子形成への関わりが知られるが、紡錘体形成や細胞分裂への関与の報告はない。我々は組換えSPATS2(ヒト)の作製に成功、それが微小管に直接結合できることを明らかにした。組換えSPATS2は微小管を束ねる能力を持つことも解明。SPATS2の機能を解析するための抗体を持たないため、組換えタンパク質に対するウサギポリクローナル抗体を作成予定。 WDHD1はWD反復配列を持つDNA結合タンパク質として知られるが、紡錘体形成等への関与の報告はない。我々は組換WDHD1(ヒト)が弱いながらも微小管に直接結合し、微小管を束ねる活性も持つことを解明。市販のWDHD1抗体でヒト細胞を染色したところ、WDHD1は分裂期に紡錘体極に局在した。ノックダウンするとこの局在がなくなることは、内在性WDHD1が紡錘体極に局在することを証明した。今後はカエル卵抽出液を用いた無細胞反応により、WDHD1の紡錘体極での機能を解明したい。
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