研究課題
肺サーファクタント由来物質が肺の末梢気腔内に異常に貯留し呼吸不全に至る遺伝性肺胞蛋白症は、GM-CSF受容体遺伝子(CSF2RAあるいはCSF2RB)変異により生じるが、いまだ有効な疾患特異的な治療法はない。これまではマウスモデル(Csf2rbノックアウトマウス)を用いて研究されてきたが、ヒトで患者数の多い(約9割を占める)CSF2RA遺伝子変異による疾患に相当するCsf2raノックアウトマウスはこれまで存在しなかったために、病態の解析や治療法の検討といった基礎的な研究が困難であった。本研究では新たに作成したCsf2raノックアウトマウスについて病態解析ならびに新規治療法の開発研究をおこなった。Csf2raノックアウトマウスはメンデルの法則に従う遺伝形式を示し、Csf2raノックアウトマウスと同様に肺では肺胞蛋白症の病態を呈し、野生型マウスに比べてマクロファージの機能(貪食能、サーファクタント取り込み分解能)の低下が認められた。野生型マウス骨髄由来マクロファージを、麻酔下でCsf2raノックアウトマウスの肺へ経気管的に一回投与(移植)する肺マクロファージ移植法の効果は、肺病理組織像、BAL細胞像およびそのBAL液について(混濁度、脂質濃度、蛋白濃度、サイトカイン濃度)、有意な改善効果を認めた。ノックアウトマウス骨髄造血幹細胞にCsf2ra遺伝子を発現するレンチウイルスベクターで遺伝子導入して分化作製したマクロファージについても、肺マクロファージ移植によって上記と同様の効果が確認された。正常なマウスiPS細胞から分化させたマクロファージを用いた研究でも同様の治療効果がみられた。肺マクロファージ移植法という細胞治療は、マクロファージを一回、直接肺へ移植する方法であり、長期間にわたる移植細胞の生着と疾患の改善および安全性が確認されており、有効な新規治療法と考えられた。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Respir Investig.
巻: 58 ページ: 102-109
Am J Respir Cell Mol Biol.
巻: 62 ページ: 87-94
10.1165/rcmb.2018-02940C
Haematologica
巻: 105 ページ: 1147-1157
10.3324/haematol.2018.214866
Mol Ther.
巻: 27 ページ: 1597-1611
10.1016/j.ymthe.2019.06.010