研究課題/領域番号 |
16K21751
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
知念 孝敏 九州大学, 医学研究院, 講師 (80432912)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 炎症 / 抗原 |
研究実績の概要 |
Foxp3陽性制御性T細胞(regulatory T cells ; Treg)は、免疫応答のブレーキ役、調節役として機能する。 炎症の行き過ぎに起因する様々な難治性疾患に対する新規治療法の一つとして、制御性T細胞の持つこの免疫抑制能を活用する事が期待されているが、それを実現する為には、この細胞による免疫抑制の基本的な動作メカニズムを詳細に解明する必要がある。制御性T細胞による免疫抑制において、抗原受容体(T細胞受容体)による抗原認識と受容体下流のシグナル経路の活性化は非常に重要な役割を果たすが、抗原受容体の持つ特異性や、抗原受容体を介した抗原提示細胞との相互作用がどのように免疫抑制の本態と関わっているかについては判然としていない。 この疑問を明らかにするために、マウス個体における炎症モデルを用い、制御性T細胞の抗原受容体に改変を加える事でどのような影響が出るのかにつき検討を進めている。平成30年度は、米国施設において維持していた遺伝子改変マウスコロニーの国内への移送を行った。同時に、抗原受容体改変の為のウィルスベクターの作製を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を遂行するために必要ないくつかの遺伝子改変マウスの動物実験施設への搬入を進めている。各系統について、米国における胚作製、移送、胚移植、胚移植後の交配によるコロニー拡大を進めているが、数系統において胚移植作業とその後のコロニー拡大に遅延を生じており、一部については作業のやり直しが必要である。 培養T細胞株や初代培養T細胞を用いた抗原受容体改変の検討はおおむね順調に進んでいるが、マウス個体を用いた解析に進むためにはまだいくつか検討しなければならない事が残っている。ウィルスベクターを用いた受容体発現においては、受容体の持つ抗原結合特異性の確保の確認と、受容体下流の十分なシグナル強度の確保が必須であるが、これらの必要条件を満たすために、発現ベクターの改変作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス個体を用いた検討を進めるために、遺伝子改変マウスの動物実験施設への導入と繁殖、拡大を速やかに進めなければならない。これまでは米国施設でのホモ接合体同士の交配と胚作製作業を行っていたが、空輸した胚の回復率や回復後の妊孕率に問題があるため、今後は日本国内の外部業者への委託、野生型マウスとの一時的な戻し交配に切り替え、業者にて十分な数の受精卵を確保した後、大学内動物実験施設へ再度搬入し、速やかに目的の遺伝型を持つマウスコロニーを拡大する事に務める。この間に、抗原受容体発現のためのベクターの改良、複数種の抗原受容体の作製、今後の実験に必要となるモノクローナル抗体やハイブリドーマの作製を進める。また、野生型マウスを用いて検討する事のできる現象については順次検討を進め、遺伝子改変マウスが得られた後の実験の発展に繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験施設へのマウスの搬入が遅延している事により、最も費用を必要とする個体解析の実験が始められていない。今後実験の進捗に伴い、必要な消耗品費用が増加する事が見込まれ、解析用機器類購入や新たなマウス作製の為の費用、人件費なども増加する。繰り越した資金は、これら諸経費に有効に活用し、研究の加速度的な進捗を促す。
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