基課題(若手研究A、2013-17)では、近位大動脈を含む心臓から上腕部までの動脈経路の脈波伝播速度(hbPWV)の計測法の高精度化を進め、上行大動脈および大動脈弓などの近位大動脈の加齢変化が、他の部位に比べ著しいことを明らかにした。また、2014-16年度に実施した挑戦的萌芽研究において、心臓から脳へといたる血流および脈波の動的変化(伝達特性)から近位大動脈の拍動緩衝機能を定量評価する手法を提案した。本申請課題では、これら2つの指標の臨床医学的意義を確認すべく、両指標で評価される近位大動脈の拍動緩衝機能の加齢変化が実際に脳の構造や機能、さらには認知症の発症との関係性に関して検討した。 本年度は、軽度認知症(MCI)患者は、年齢をマッチさせた認知的正常者よりも脳血管インピーダンスが高い、2)1年間の持久的運動トレーニングはMCI患者の脳血管インピーダンスを低下させる、という仮説を検証した。横断的研究では,中大脳動脈の脳血流速度と頸動脈圧の動的変化をクロススペクトル解析し,MCI患者(67±7歳)58人と健常対照者(65±6歳)25人の脳血管インピーダンスを推定した。縦断的研究群では,無作為に割り付けられた37名のMCI患者の脳血管インピーダンスを1年間の有酸素背運動トレーニングの介入前後で評価した。その結果、MCI患者は認知的に正常な高齢者と比較して脳血管インピーダンスが高いこと、及び、習慣的有酸素性運動によってMCI患者の脳血管インピーダンスが改善するすることが明らかとなった。現在、その成果を学術論文にまとめている。
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