化学物質や放射性物質等の食品基準値の理解や受け止め方、行動の関係を理解し、合理性の高いリスク対策や基準値設定のあり方の検討に活かす知見を得るために、①チェルノブイリ事故の影響を受けた欧州における複数の国の放射性物質に関するリスク対策(基準値の設定の根拠・背景、対策の効果等)に関する調査と、②日本とノルウェーを対象とした放射性物質の基準値に対する公衆の認知・行動に関するアンケート調査を実施した。チェルノブイリ事故後のノルウェーにおけるトナカイ肉の基準値やベラルーシにおける食品の基準値、またウィンズケール原子炉火災事故とチェルノブイリ事故の影響を受けたイギリスのカンブリア地方における放射性物質リスク管理(羊肉の基準値)について文献や報告書、関係者へのヒアリング等より、その根拠・背景、対策の効果等について分析・考察を行い、放射性物質のリスク対策(基準値)は、それぞれの国の政治経済状況や食文化・食習慣により大きく異なる可能性があることがわかった。さらに、放射性物質の基準値に対する公衆の認知・行動に関するアンケート調査では、日本とノルウェーにおいて、基準値の存在やその根拠についての認知、基準値の在り方、検査されている食品に対する態度等の相違点を確認し、地域や食品によって、食品中の放射性物質に柔軟な基準値を設定することに同意する割合は日本もノルウェーも同程度であること、地元の食品を食べ、地元の生産者を支援することは重要だが、地域や文化の違いによる制限は受け入れられない可能性があることが示唆された。
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