本研究は、清朝のモンゴル統治を支えた駅站網に注目し、その運用実態や政治的・社会的影響を解明する基課題を、国際共同研究として発展させたものである。 前年度までの成果を補足すべく、今年度も駅站路についての現地調査を計画していた。とくに、清代漠北駅站の幹線であるアルタイ軍台のうち、漠北東部のハラチン駅站について、その維持管理に当たっていた「ハラチン集団」が、現在もそのアイデンティティを維持して多数存在していることが判明し、現地で重点的に聞き取り調査をおこなう予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響で海外調査を中止せざるを得なくなり、併せて計画していた海外での発表や研究会なども実現できなかった。ただ、オンラインで現地研究者・現地協力者と連携を取りながら、最低限の補足的な調査をおこなうことができた。 主な成果として、漠北東部のハラチン駅站について、研究成果を総括するような論文を発表することができた。その論文では、行政文書の分析に加え、現地調査、聞き取り調査の成果も併せ、駅站の成立から現在に至るまでの歴史、拠点駅站であるサイルオスの遺構、そして、サイルオスも含めたハラチン駅站の各駅に併置されていた駅站寺院についての分析結果をまとめ、駅站の社会史的意義、現代史的意義を論じることができた。 総じて、国際共同研究を行ったことで当初計画していた以上の知見を得るとともに、さらなる課題を見つけることができた。この成果をもとにさらなる研究を進めたかったが、現時点での研究成果を総括することができたため、本研究を終了することとした。本研究で構築することができた内外の研究者・協力者との関係、史料や現地調査のデータは改めて次の課題へ継承することとした。
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