本課題は、基課題「戦後アメリカにおける保守派の社会運動とカントリー音楽の相関」(若手B)を発展させるものであり、1970年代までに顕在化したカントリー音楽の右傾化と保守派の政治家との結びつきが、それ以降どのように継続あるいは変容し現在に至るかを解明することを目的としている。現代アメリカの主要な歴史的事象の中で、政治家や活動家がどのように音楽を利用してきたのかを、同時代の音楽家による政治との関わりとも関連させて明らかにするものである。特に、選挙広告や政治集会などの場面における音楽の役割や、音楽家と政治家、活動家の関係について、視聴覚情報を含む歴史資料及び同時代の資料の分析を通して、党派間や音楽ジャンル間の比較も行いながら検証した。最終年度にあたる当該年度は、渡米中に入手した資料の分析および研究討論を発展させるとともに、トランスナショナルな視点からの検証を進めるために、カントリー音楽家の政治活動およびその受容に関する日米比較についても進展させ、人種、ジェンダー、階級の観点から比較分析を行った。また、今世紀におけるカントリー音楽の政治利用や現代アメリカにおける音楽家の政治との関係性とその歴史的な意味を探るため、「テロとの戦い」をめぐる音楽家による表現と議論について、作品の分析や新聞雑誌記事や刊行されたインタビュー等の分析を通して日米での批評を分析するなどを行った。得られた研究成果については、出版に向けて内容をまとめるとともに、複数回にわたり国際学会での発表を行い意見交換を行った。
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