研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
本研究では、19世紀にセーヴル製作所が、中国磁器に見られる各種の色釉(銅紅釉・青磁釉・翡翠釉・紫釉・炉釣釉など)や複数の釉を用いた彩釉に関心を寄せ、これらに適合する新しいタイプの硬質磁器(新硬質磁器)を開発し、その上で中国の色釉を模倣する中で独自の装飾法を考案していたことを明らかにし、その技術の詳細を考察した。概して、中国の色釉技術の模倣を通して辿り着いたセーヴル製作所の釉薬表現は、模倣の中の創造と言える。
美術史
本研究では、文献調査と作品調査を掛け合わせて、19世紀にセーヴル製作所で並行して行われた中国陶磁研究と新硬質磁器開発について考察した。日本の陶磁研究者がこれまで目を通してこなかった文献(セーヴル製作所で行われた中国磁器の化学分析に関する研究報告書)を翻訳し、現代でも困難な銅紅釉の技術(成分・造釉法・施釉法・焼成法・冷却法)を再検討し、19世紀末にセーヴル製作所で考案された新しい装飾法に光を当てるなど、磁器の装飾法に関する新たな知見や見解を提供する点に本研究の学術的・社会的意義があると思われる。