赤ちゃんポスト問題について、ドイツにおける議論にみられる様々な論拠の分析を発端に、本問題の倫理学上の扱いにおける根本的な問題点を明らかにした。それを踏まえて、赤ちゃんポスト問題と深く結びついている「出自を知る権利」が、本議論における最も影響力のある論拠としてどのように浮上したのかについての分析も行った。とりわけ、「出自を知る権利」の赤ちゃんポスト議論における役割と、非配偶者間人工授精をめぐる議論における「出自を知る権利」の扱いを比較し、「出自を知る権利」の本質についての検討を行い、それを通して得られた再解釈を、これまで日独両国の当該議論で十分に論じられていない重要な要素として提示した。
|