本研究は、米国ユダヤ人が多く居住していた北東部大都市部で展開された公民権運動について明らかにする。公民権運動は、ミシシッピ、アラバマを中心として南部で展開されたものとみなされており、北東部で展開された活動は、従来、最も研究が手薄になっている部分であった。また、基課題「聞き取り及び日記の分析を用いた米国ユダヤ人史、公民権運動史の研究」(基盤C)の申請時には、北東部大都市部についてはボストンの黒人居住地域ロックスベリを調査の主対象としていたが、研究を進める過程で、ニューヨーク市立大学クイーンズ・カレッジ大学の学生たちが1960年代に学内および大学近隣(ニューヨーク市クイーンズ区)でおこなっていた活動に関する相当量の史料が発掘されたためである。具体的には、 1.ニューヨーク市クイーンズ区ジャマイカでの黒人児童向け無料授業の実施(1963年-) 2.公立学校の人種統合を求めてのニューヨーク全市学校ボイコットの支援(1964年) 3.CORE(人種平等会議)クイーンズ・カレッジ支部の日常活動(COREは数ある公民権団体の中でも白人の割合が高く、各大学支部のメンバーはほとんどがユダヤ人だったといわれる。) を検証する。また、南部での活動であり基課題の発展となるが、同大学学生の活動として 4.ヴァージニア州プリンス・エドワード郡での黒人児童向け学校の建設・無料授業の実施(1963年)について明らかにする。 2019年度は、9月にニューヨーク市立大学クイーンズ・カレッジでの滞在を終え、帰国した。複写した資料の整理・当事者との電子メールによる交信による調査は継続している。
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