英国人作家アンジェラ・カーターの作品における日本の影響について、特にパフォーマティビティに注目した共同研究を行った。カーターの日本滞在の詳細について、近年になってようやく知られるようになってきたこともあって、日本はカーター研究においてのホットトピックとなりつつあるなか、本研究は日本からの知見を国際的に発表するというその目的を果たし、大きな貢献を果たすことができた。具体的には大英図書館とEast Anglia大学図書館アーカイヴにて調査を行い、カーター作品における女性性や男性性の概念が日本の歌舞伎や文楽、また谷崎などの文学の影響を大いに受けていることを論文、インタビュー、口頭発表、シンポジウム開催などの形で国際的活動を行った。 2018年1月には単独でUEAでの研究発表を行った他、3月には共同研究者であるStephen Bensonと共に大映図書館でのカーターについての講義を受け持った。さらに4月にはアントワープ大学にて招待講演を行い、本研究について発表した。6月には集大成として、国際シンポジウムをBenson教授と開催した。この国際シンポジウムにはアメリカ、スイス、日本、フランス、そしてイギリス国内からカーター研究者が集まり、カーター学会の立ち上げの場ともなった。 本研究はカーター研究の本場であるイギリスを始め、国際的に注目を集め、BBCが2017年8月に放映したカーターについてのドキュメンタリーに出演した。また国際シンポジウムの成果は、Oxford大学出版から発行されているContemporary Women's Writingという著名なジャーナルの特別号となることが決定した。その他の出版成果としては、論文が収録された書籍2冊が出版された他、あと2冊も2019年中には出版の見込みとなっている。今後も日本人カーター研究者として国際的な場でカーター研究に貢献したい。
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