研究実績の概要 |
本研究が成果として提案するPresentational selfの理論枠組み(Komatsu, 2019)の展開について,2022年度までの成果をふまえ,データの追加分析を行った。また,これまで編集を行ってきた,当該領域の複数研究者(欧州,日本,南米)との共著論文集(学校教育を含む制度的文脈における自己の形成にかかわるもの)の最終的な編集作業を実施した。さらにこのPresentational self概念をより平易に発信するための方策として,小学校教育において国語の教材として用いられる物語を例として用いた説明を検討した。概略は次のとおり。 追加的なデータ分析:認定こども園での昼食場面の縦断的な観察記録の分析について,2022年度に実施したものとは異なる観点から,より多くの幼児を対象とした分析に取り組んだ。 国際的論文集の編集:2021年度に各著者に最終稿の提出を求めたが,諸事情で最終稿の提出が2023年となった著者があった。現在編者として出版社向けの最終稿の調整中である。この間,本研究の共同研究者であり,論文集のSeries EditorでもあるJaan Valsiner教授と断続的に協議しつつ編集作業を進めた。 Presentational Self概念の平易な発信への検討:本研究の成果であるPresentational self概念は,文化心理学に基づくとともに,心理学が通常前提とする「自己」の概念と大きく異なる側面があり,そのままでは広い理解を得ることが難しいと考えられた。そのため,小学校教育の国語教材として一般に広く知られた物語を複数取り上げ,それを通してこの概念を説明する検討を行った。通常の実証研究とは異なる形式となるため,そのまとめ方と発表のあり方を検討中である。
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