最終年度は,主に地域の雇用に関する研究を進めた.特に,アベノミクス期を対象として分析を試みた,まず,雇用の代理変数である就業者数と完全失業率とを,循環的要因と構造的要因とに区分した.その際, マクロデータに加え,総務省「労働力調査」で対象とされる9地域の動向も観察した.すべての地域について,アベノミクス期以降は失業率が循環・構造要因とも,改善傾向にあることが分かった. 次に各々の地域について,ベクトル自己回帰分析を試みた.その際,東日本大震災の影響を考慮するため,東北を除いた8地域を対象とした.実証分析の結果,過去の政策は必ずしも雇用の改善や失業率の低下がみられない一方,アベノミクス期の金融・財政政策のポリシーミックスについては,雇用の改善・失業率の低下がほとんどの地域で観察された.特に首都圏を中心とする南関東地域で有意な結果が得られた点は,昨今の首都圏における雇用の改善を裏付けるものでもある.過去の景気対策としての公共投資は,政治的な理由もあって地方に重点配分されていたものの,今後公共投資を景気対策として行う場合は,首都圏を中心に行うことの必要性を示唆するものとも言える.上記の研究は,夏季に滞在したUniversity of Essexの学内セミナーで報告し,UC Irvineで開かれたカンファレンスと,Pubic Choice Societyにて報告した.かつ,一部が書籍の一章として刊行された. また,UC Irvineの大学院生と行っている国際共同研究については,計量分析を進めた.共著者とのディスカッションを通じ,完成段階にある.このほか,公共投資が株式市場に与える影響について,時系列データを用いた研究が刊行された.
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