本研究は、近年、日本で非違行為、勤務成績不良、病気・障害等を理由とする解雇が増加する中で、解雇規制(特に労働契約法16条)のあり方を、ドイツ解雇法の研究と比較しながら、こうした3つのタイプの理由をめぐる解雇の審査基準を、解雇事由や規制相互の関連性に着目して、体系的に研究・解明しようと試みてきた。最終年度においては、とくに勤務成績不良や非違行為等による解雇の規制を、比例原則及び予測原則等に依拠して再構築するべく研究を進めた。その成果を、細谷越史「労働者の勤務成績不良・能力不足をめぐる解雇法理の再検討―近年の裁判例の展開をふまえて―」香川法学40巻3・4号31頁~81頁、2021年および細谷越史”Neue Entwicklungen des Kuendigungsrechts im Bereicht der "Low-Performance" in Japan”、Recht der internationalen Wirtschaft 2021、7号、Deutscher Fachverlag GmbH、Fachmedien Recht und Wirtschaft(原稿提出と校正済み)2021年 (発行予定)として発表した。 さらに、労働者の非違行為等のケースにおいて、経営リスクの分配原則や生存権保障等に基づく明確な損害賠償責任制限の基準を解明するよう試みた。その成果を細谷越史「損害を被った第三者に賠償した労働者から使用者に対する逆求償権が認められた事例」『新・判例解説Watch Vol. 27』、日本評論社、257頁~260頁、2020年として公表した。 この他、細谷越史「[第12章]雑則 労働基準法第105条の2から第113条まで」西谷敏・野田進・和田肇編『新基本法コンメンタール 労働基準法・労働契約法〔第2版〕』所収、日本評論社、309頁~315頁、2020年を公表した。
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