量的緩和政策、質的緩和政策それぞれについて理論分析を行うべくCW (2010)に企業を導入したモデルを構築し数値解析を行った。所期の結果のうち上記A)「ゼロ金利下でも資産価格の下落に際して金融仲介機関が資金制約に直面する限り超過準備は貸出を回復させ、ひいては速やかにマクロ経済変数を安定化させ厚生費用を最小化する」という結果を得た。量的緩和政策の下では、資産価格を低下させるショックに際して法定準備を大幅に上回る準備預金がなされることで金融仲介機関は資金制約に直面することなく貸出を増加させ、結果として企業の雇用は変化することなく、 GDPギャップとインフレ率もほとんど変化することなく推移する。このため、経済厚生の損失もほとんど生じない。このことが数値解析によって確認された。また、質的緩和政策の下でも量的緩和政策と波及メカニズムは異なるものの資産価格が下落してもGDPギャップとインフレ率はほとんど変化することなく推移することが確認された。加えて、量的緩和政策、質的緩和政策それぞれの下での厚生損失は全く同一であった。つまり理論的に所期の結果上記C)「量的緩和政策と質的緩和政策は効果の面から同等であること」が確認された。この結果は既に行われたGK (2011)に詳細な中央銀行のバランスシートを導入したモデルの数値解析の結果と同一である。今後は研究計画に基づきDSGE-VARを用いてモデルを推定し、この推定結果に準じてモデルの動学的シミュレーションを行う。
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