本研究では、現実のマクロプルーデンス政策を定量的に精緻に評価でき、かつデータからも支持されるよう経済モデルの構築を行うことを研究目標としている。現在は国際共同研究の形で3つのプロジェクトを行っており、具体的な研究成果として完成させている。 1つ目の研究では、メルボルン大学のMei Dong准教授と成蹊大学の庄司俊章助教と「Product Cycle and Prices」を執筆した。当該論文では、需要者と供給者が市場で取引相手をサーチした上で、財(賃貸などの不動産)の置き換わり(入れ替わり)のタイミングで価格交渉が行われる基礎的なモデルを構築している。サーチモデルの優位性を示すために、本研究では製品財の価格動向を適切に説明できることを示している。 2つ目の研究では、メルボルン大学のMei Dong准教授と成蹊大学の庄司俊章助教と「Search and Matching in Rental Housing Market」を執筆した。当該論文では、不動産市場についてのサーチモデルを構築することで、不動産の貸手と借手の取引をモデルを用いて精緻に再現している。また、オーストラリアの不動産取引についてモデルをカリブレートすることでオーストラリアの不動産市場の動向を前提とした場合に有効となる、不動産規制についてのマクロプルーデンス政策についての分析を行っている。 3つ目の研究では、メルボルン大学のTim Robinsonシニア・フェローと「Credit Chains and Financial Disturbances」を執筆した。当該論文では、不動産セクター、不動産貸出、不動産貸出規制政策などの、オーストラリアで導入済みのマクロプルーデンス政策に関連する具体的要素を、経済理論モデルに取り込むべく研究を行った。
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