スエズ戦争後の運河再開に向けた国際交渉の分析を進めている。スエズ戦争後、運河はエジプトの一方的宣言によって再開されたが、それはイギリスの立場を無視するものであり、その権威の失墜を意味するというのが通説的立場であった。しかし実際には、スエズ戦争後は、エジプト領内へのUNEFの駐留と、アメリカによる穏健アラブ諸国への援助ゆえに、ナセルの威信はむしろ低下しつつあった。むしろイギリスは、アメリカと国連に責任を肩代わりさせることでナセルの影響力を封じ込めることに成功したと言える。そしてエジプトがICJの強制的管轄権を受諾するなど譲歩したため、経済的な観点からスエズ運河再開という妥協を選んだのである。
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