まずは,所得分布の推定に関しての研究を行った。そこにおいては,対数正規分布に加えて,より柔軟なSingh-Maddala分布,Dagum分布を仮定して,日本の家計調査におけるあてはまりの良さを分析した。分析の結果,ジニ係数の計測に焦点を当てた場合には,分布のパラメータを直接推定するより,ローレンツ曲線のパラメータを推定した方がよいことと,対数正規分布の有効性が示された。その後,対数正規分布の混合分布への拡張が行われた。その前半部分は『国民経済雑誌』に掲載された。そして後半部分は,投稿に向けて準備中である。また,この結果を受けて,国際共同研究の一環として,Feldkircherシニア・エコノミストと金融政策が所得分配の不平等度に与える影響を分析するためのモデル構築が行われ,日本のデータを用いた実証分析も併せて行われた。この分析においては,金融政策の所得分配へ与える側面をあきらかにすることができた。この結果は現在投稿中である。同時に,地域の景気循環において,景気循環の空間的要因分析が行われ,関東圏の景気循環は日本の景気循環と似ており,関東圏が日本経済を引っ張っていることが明らかになるとともに,景気後退期において,空間的なつながりが強くなることが確認された。この結果は,Review of Urban & Regional Development Studiesに掲載された。最後に,空間的要因の可視化に関して,阪神淡路大震災を取り上げて,地震保険への加入行動の震災前後の変化を分析するための潜在変数モデルを構築し,GISによる可視化をしたところ,加入構造は都市圏で起こっていること言うことが明らかになった。そして,この結果は,投稿に向けて準備中である。
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