基課題では、自走する多数のアクティブマター(微小管)を用いて、ゲルなどに代表される軟らかい材料(ソフトマテリアル)表面の力学特性変化を探針する『マルチアクティブプローブ』法を開発することを目的としてきた。これまでに、1)独自開発した顕微鏡上力学試験機の作動精度を確認するとともに弾性基盤上で微小管アクティブプローブを長時間駆動させる条件の最適化を終えている。さらに、2)本装置を用いて弾性基盤上の力学的な環境変化が微小管アクティブプローブの動的挙動に及ぼす影響を評価してきた。これらを通して、(1)アクティブプローブである微小管は応力方向や荷重モード(引張や圧縮など)に依存して垂直方向、対角方向あるいは環状に進行方向を変化させる、(2)微小管の移動速度はソフトマテリアル基盤の伸張歪を増加させると高くなる、さらに、(3)コンピュータシミュレーション実験により微小管の偏向運動は微小管にかかる曲げエネルギーに依存するという知見を見出している。これらの研究成果は、微小管がソフトマテリアル表面の力学特性を評価するアクティブローブとして有用であることを強く支持するものである。本課題では、これまでの工学的な視点を生命科学分野や医学分野にまで広げることで基課題の飛躍的な発展を目的としている。具体的には、顕微鏡上力学試験機を用いて微小管に引張あるいは圧縮応力を印加することで微小管の座屈現象や断片化現象を再現するとともに、共同研究先が保有する先進的な解析技術を用いて再構成系の細胞内物質輸送を評価することで、1分子メカノバイオロジーなどへの展開を検討する。
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