研究実績の概要 |
ナノ・フォトニクスの機能性を狙う物質中励起子物性の数値的理論的解明を目的として、国際的にも研究進展の急激な遷移金属化合物系層状物質を対象とした研究を進めてきた。英国ランカスター大学・物理学科のNeil D. Drummond講師グループを受入先として、密度/有効質量/運動空間の次元性/量子統計性といった「舞台設定」の違いで、励起子相にどういった多様性(気相/分子相/結晶相)が生じるかという観点から「励起子相の大域的相図解明」に取り組んだ。平成30年度から2カ年度で、それぞれの年度に半年ずつの現地滞在を行った。2019年秋に現地滞在を終え、研究課題にかかる直接的成果としては、滞在先研究者との2報の共著原著論文(それぞれTop5%, Top10%)を残すことができた。本事業による長期滞在を通じ、報告者研究室所属学生の来訪設定などに取り組んだ結果、これら学生を介在させた協働が進んだ。2020年度は、当該方法論に関連した研究展開として、「1/米国協働先のアプリQMCPackによる応用展開」、「2/イタリア協働先のアプリTurboRVBによる方法論深化」、「3/英国協働先とのフォノン物性シミュレーションを用いた展開」の3つの方向性を提起し、これらに沿って研究を進めた。(1)に関しては、本研究室学生から協働先の博士研究員として転出した市場博士を通じ、複数の協働プロジェクトが走っており、そのうちの1つはジャーナル投稿済となっている。(2)に関しては、研究室メンバーの中野助教が海外学振制度で協働先に長期滞在しており、既に1報の原著論文が採録決定済の成果をあげている。(3)についても1報の原著論文が採録決定済である。(2)の課題については、その研究計画を発展させ、2021年度の科研費獲得に繋がっている。
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