研究課題
最終年度には、国内において、平面型NMRコイルのさらなる改良をはかり、それを用いて希薄リンドープシリコンの二重磁気共鳴測定による31P-NMR信号の検出を再現することに成功した。これは動的核偏極を用いた高感度なNMR測定が可能で、今後、磁気共鳴型量子計算機実現へ向けたスピン操作の実証へ向けたひとつのハードルを越えたという意義を持つ。研究期間全体を通して、量子計算機の候補デバイスである希薄ドープシリコンを舞台として、量子計算実現に必要とされる1 K以下の超低温、4テスラ以上の高磁場域における、ドナー電子とドーパント原子核スピンのスピンダイナミクスを、日本、フィンランド、韓国の国際共同研究により明らかにした。電子スピン共鳴(ESR)と核磁気共鳴(NMR)を組み合わせた二重磁気共鳴測定装置をフィンランドとの共同研究により開発し、ESR測定は主にフィンランドで、NMR測定は主に日本で行った。前者は電子スピンから見た核スピンダイナミクスを明らかにした。後者は量子ビットとなる核スピンを直接観測することに成功した。これらは今後の磁気共鳴型量子計算機の実現のために必要とされる、電子スピンおよび原子核スピンを支配する物理現象の基礎的理解を進めたことに加え、NMR信号直接観測により詳しい知見が得られる可能性をひらくものである。技術的には、世界的にもこれまでなかった、高磁場・超低温域でESRとNMRの両方の測定が高感度に行える装置の開発に成功したという意義がある。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 9件) 備考 (1件)
Applied Magnetic Resonance
巻: 52 ページ: 305~315
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Physical Chemistry Chemical Physics
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https://r-info.ad.u-fukui.ac.jp/Profiles/30/0002989/profile.html