研究課題
本研究は、基課題で新たに開発した導電性薄膜ストローを素粒子飛跡検出器として実装するための技術開発を、CERNで推進中の別実験(NA62実験)の海外共同研究者と進めるものである。素粒子実験で用いられる飛跡検出器は、その構成素材の物質量が小さければ小さい程、優れた飛跡検出性能が期待される。本研究は、究極の物質量軽量化を狙い、世界で最も薄いストロー検出器を開発し、更にそれを真空中で運用することで実現することを目指す。基課題では、現有の20ミクロン厚・10mm径のポリマー製薄膜ストローを用いて飛跡検出機の建設を現在進めたが、更なる軽量化のための研究開発として、上記飛跡検出器開発と平行して、これを12ミクロン厚・5mm径ストローにまで軽量化することを目指した。そのための新ストロー製作試験をJINR研究所(ロシア)との共同研究で進めてきたが、2018年度にその試作に初めて成功した。試作サンプルをCERNに持ち込み、張力印加試験を実施。導電性薄膜と電気的な接続を安定に保持するための電流導入端子の設計等を進めた。この成果を元に、2019年度はCERNに長期滞在し、新型ストローに適性な張力を印加しつつ電流導入端子の役を兼ね備えるストローエンドプラグを開発、新ストローを用いた検出器試作機の製作を始めた。2020-2021年度は、感染症の流行に起因する渡航制限によりCERNでの研究を進めることが出来なかったが、鋭意リモート会議により渡航制限解除後の研究方針の最適化を図った。2022年度は、渡航制限の緩和によりCERNへ赴き新型ストローの検出器への実装試験を再開したが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、JINRで進めてきた新型ストローの供給が滞り、使用可能なストローの本数が制限されることとなった。以上の状況を鑑み、2022年度における成果をもって本研究の取りまとめとすることにした。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 1042 ページ: 167373~167373
10.1016/j.nima.2022.167373