本研究では、多様な反応性をもつ金属錯体触媒と、精密かつ多彩な反応場を提供するタンパク質を融合したバイオハイブリッド触媒を開発するための進化工学的手法を確立し、バイオマス利用への突破口となる芳香族化合物の環境調和型物質変換反応を実施した。シクロペンタジエニル(Cp)およびペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp*)配位子をもつRh金属錯体を選択し、マレイミドを導入した錯体とバレル構造を有するニトロバインディンの疎水空孔内のシステインを共有結合的に連結可能であることを確認した。さらに、実験室進化に適用可能とするために、錯体の配位子の最適化した。種々のチオール系配位子を検討し、ジチオリン酸配位子で空配位座を保護したRh(III)錯体が、硝酸銀の添加時に脱保護が進行し活性化することを見出した。ジチオリン酸の配位及び脱離挙動を利用し、Rh(III)を活性中心に持つバイオハイブリッド触媒を構築した。このバイオハイブリッド触媒は、硝酸銀存在下に活性され、オキシム及びアルキンの付加環化反応において触媒活性を示すことを明らかにした。また、バイオハイブリッド触媒を指向性進化法による改良を目指して、ホールセルによるスクリーニング系の確立に取り組み、大腸菌細胞膜上に提示したタンパク質に対してRh(III)錯体を複合化することも達成した。さらに、ロジウム錯体を連結したバイオハイブリッド触媒を進化工学的スクリーニングを行い、触媒を活性する鍵残基の決定に成功した。
|