本研究課題「小粒子内包カプセルの構造制御とその高次構造体材料の創出」では,大きさの揃ったカプセル中での内包小粒子の構造制御と複合カプセル高次構造体物性について検討を行う。高次構造形成には大きさの揃ったカプセル作成が必須であるため初年度-次年度まで,国際共同研究者のトロント大学化学科のEugnia Kumacheva 教授の研究室にVisiting Researcher として滞在し,マイクロ流路技術を習得することに努めた。導入したマイクロ流路装置およびシリンジポンプを用いて,カプセル径を揃える検討を行ったが,目的とするカプセルが重合できるサイズ領域にて,大きさを揃えた液滴作製に至らなかった。 また,シリカ粒子内包カプセルについて,ゾルゲル反応触媒の種類の違いによる生成シリカのモルフォロジイ挙動および,シリカ粒子の運動性付与の検討を行った。ゾルゲル触媒の種類や量によって,ひとつから複数,無数のシリカ粒子が内包するカプセルが得られた。内包シリカ粒子はカプセル内が溶媒に満たされていれば,運動性を保つが,乾燥時ではカプセル内壁に融着してしまった。疎水化処理を様々に試みたが,改善できなかった。そのようなかで,逆に乾燥時の毛細管圧による融着を利用し,約150-200 nmほどの大きさの無数のシリカ粒子をカプセル片側にのみ凝集させることに成功した。カプセル片側にのみシリカが存在するカプセルは,1粒子の中で屈折率と共に重心が偏った微粒子となり,起き上がり人形のように方向規定制がある材料となった。
|