研究実績の概要 |
2018年度は、有機半導体への電荷注入エネルギーの形成機構に関する知見を、実験家グループとの共著で出版した[K. Yamada et al., Phys. Rev. B 97, 245206 (2018)]。そこでのアプローチは、注入電荷の状態をGW近似で正確に記述するが、表面での状態は厳密に再現できていない。 海外共同研究者と議論し、本研究で用いるGW space-time(GWST)法での、誘電行列や遮蔽ポテンシャルの計算プログラムを修正した。そこでは、2006年に提案された修正法[S. Ismail-Beigi, Phys. Rev. B. 73, 233103 (2006)]を採用した。プログラムの修正により、半導体表面での巨視的誘電関数の振る舞いを正しく再現できた(論文は準備中)。 もう一つの目的の、GW近似の金属系への適用に向け、GW近似の金属系の適用に向けたプログラム開発を行うヨーロッパの複数の研究者と議論した。結果、GWST法で金属系を数値的に安定に扱うための修正は、修正箇所が膨大で本研究期間内での達成が難しいことが分かった。それでも、現在の段階で表面での電荷注入を高度に再現できるので、金属層(導体)による鏡像電荷の効果を付加的に加えると有機ー金属界面での準位接続が再現できる。GW近似の有機ー金属界面への適用性を、関連する最近の文献まで検討し、得た知見から執筆した解説記事が、自身の計算データと合わせて2019年に出版される[S. Yanagsawa and I. Hamada, A Chapter in Theoretical Chemistry for Advanced Nanomaterials - Functional Analysis by Computation and Experiment (Springer Nature, 2019)]。
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