体内で造血幹細胞は、骨髄でのみで自己複製および白血球や赤血球など血液細胞への分化がおこるがその機構は不明である。生体外で造血幹細胞を自在に増やし血液細胞へ分化することができれば、血液疾患の治療の道が拓ける。本国際共同研究では、造血幹細胞の微小環境を研究するためのバイオマテリアル組込マイクロデバイスを構築する。材料化学の技術から細胞の足場を、microTASの技術から三次元の組織構築や細胞へ力学的な刺激の負荷と、生体内の細胞環境に必要な物理化学的環境のほぼ全容を実現できる。本研究では、デバイスを流路構造にして、流れる血管を配置し、周囲には細胞外マトリックスを組み込む領域を設計、血管には培地を供給するポンプと接続した。また血流による血管拡張を模倣する培養流路として伸展可能な薄膜を組み込んだデバイスを開発した。 細胞の足場を生体に近づけたデバイスとして、昨年度から引き続きゼラチンを材料としたデバイスの開発を行った。ゼラチンの凹凸構造を培養表面としたゼラチンデバイス内に、血管内皮細胞と線維芽細胞を3次元的に培養したところ、血管内皮細胞が自発的に管状になり毛細血管網を構築することができた。また、線維芽細胞と卵核膜パウダーを混合して、より厚みのある3次元組織の構築も試みた。一方、血液細胞の分化誘導に関わる実験としては、伸展培養可能なデバイスでの細胞培養を行い、メカノセンサータンパク質および血液細胞分化に関わるタンパク質の免疫染色を行った。造血を支持するマウスの骨髄由来間質細胞OP9を伸展培養することにより、血液細胞の分化に関わる幹細胞因子SCFの発現量が増加する傾向が示された。
|