本研究の目的は、移動通信システムにおいて今後さらなる高速・高信頼な無線伝送性能を実現するために、数100~1000のアンテナによる巨大な自由度を利用可能な大規模アンテナアレイシステムの開発を実施し、実用的な高速・高信頼無線ネットワークを実現するための研究基盤確立に貢献することである。基課題の研究項目のひとつにおいて発案された高レート大規模アンテナアレイによるインデックス変調方式に関して、方式のさらなる高度化と多面的な性能解析を行い、提案システムの設計指針を明らかにする。 2020年度には、イギリス・サウサンプトン大学と共同で、前年度までに考案した複数の方式を一般化し、その詳細な性能評価を行った。特に、アンテナ(空間)次元だけではなく、時間・空間・周波数の次元のインデックス変調を同時に活用し、シングル/マルチキャリア両方を対象とした統一的なマルチアンテナプラットフォームを考え、その通信性能を明らかにした。また、マルチキャリア伝送を用いた場合に、信号のピーク対平均電力比(peak to average power ratio: PAPR)、ガードバンドによるレートロス、および、帯域外(out-of-band: OOB)放射の低減が可能であることを明らかにした。さらに、送信機において高周波回路ブランチ数をアンテナ数より低く抑えることによる静的消費電力の削減を同時に実現した。 なお、これらの成果の一部についてはIEEEジャーナル誌への投稿を行っており、既に複数が採択に至っている。
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