本国際共同研究では、相互作用解析が可能な次世代型骨格筋組織チップの開発と応用を行うことを目標とした。海外共同研究者との議論の元、具体的には、以下を実施している。(A)基課題で開発した収縮力測定可能な筋組織チップのスケールダウンあるいは改良を行う、(B)スケールダウンあるいは改良したチップを用いて筋細胞や線維芽細胞で組織を構築し、(C)他の細胞や組織、さらに細胞周囲の細胞外マトリックスとの相互作用を解析する技術を開発する。 本年度は、昨年度までに開発したチップを用いて、血管を含む培養筋組織の構築を行った。チップ上でマウス筋芽細胞株C2C12を用いて培養筋組織を構築した。構築した培養筋組織は電気刺激に応答し収縮することが確認できた。組織構築後に、組織内に作製した管腔内にヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECを播種し、血管様構造を形成した。培養筋組織内の血管様構造は少なくとも数日間維持することができた。さらにシリンジポンプを用いて、血管様構造内に液体を灌流することが可能であった。これらの結果から本チップは筋組織と血管を介した他の臓器・組織との相互作用解析に有用であると期待される。これと並行して、線維芽細胞から成る生体組織を用いて、組織形成に対する細胞外マトリックスの効果を検証した。フィブロネクチン産生遺伝子をノックアウトした線維芽細胞を用いた実験により、組織形成には不溶性型のフィブロネクチンが重要な役割を果たすことを見出した。
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