本研究は、基課題にて開発した自己組織化InAs量子ドット(QD)ベースの超広帯域波長掃引光源(SS: Swept-Source)を導入した医療用光コヒーレンストモグラフィー(OCT)システムを実現することを目指し、国際共同研究を行った。具体的には、サイズ分布に由来する広帯域な利得帯域を持つInAs-QDを含む半導体デバイスをレーザー発振用の利得媒体とすることで、広帯域なQDベースのSS(QD-SS)が実現され、さらにQD-SSをOCTに導入により既存の性能を超えるSS-OCTシステム開発を目指した。 2018年度までに、QDデバイスおよびOCTシステム研究の最先端を行く英国Glasgow大学のRichard Hogg教授およびSheffield大学のStephen Matcher教授のグループに滞在し、InAs-QD利得チップを用いた外部共振器によるレーザー発振およびレーザー波長掃引の実験や、SS-OCTのセットアップの習得を行った。最終年度となる2019年度は、海外グループ滞在時に得られた実験手法やノウハウを活かし、QD-SSをSS-OCT用光源として利用する際の最適化を図るべく、InAs-QDの広帯域レーザー発振特性制御を主眼において研究を行った。QDベースデバイスの利得特性の温度や注入電流に対する依存性などを系統的に調べた結果、注入電流や動作温度を適正化することで、SS-OCTに適したQD-SSの波長掃引性能を引き出せることが分かった。これらの結果から、QD-SSの利得特性制御およびOCTシステム導入への最適化に関する知見を得ることができた。
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