自動車事故による頚部傷害は,女性の方が受傷リスクが高いとの報告があり,その対策が求められている.事故時の頚部傷害は,衝撃時の急激な頚椎の変位により,頚椎間軟組織が過度に変形し損傷することで発生するとされる.椎骨の初期位置となる乗車姿勢の脊柱の配列・彎曲状態(アライメント)は,衝撃時に頚椎間の相対変位に影響を与える因子の一つされるが,乗車姿勢における脊柱アライメントは殆ど調査されていない.また,脊柱アライメントは男女間で異なる傾向を示すとの報告があるが,脊柱アライメントの違いが頚椎間の相対変位におよぼす影響は十分に解明されていない.よって本研究では,乗車姿勢における脊柱アライメントとその男女間の差異を調査し,これらの差異が衝撃時の頚椎間の相対変位に及ぼす影響を解明することを目的とした.本年度は,仰臥位および立位における脊柱アライメントのパタンを分析し,これまでに取得した乗車姿勢における脊柱アライメントと比較することにより,乗車姿勢における脊柱アライメントの特徴を調査した. 仰臥位および立位における脊柱アライメントは,初年度に用いたMRI画像と同じシリーズの画像(同時期に同じボランティアを対象に撮影)を用いて分析した.この画像データは,倫理審査実施の上,医師の立会いのもと,インフォームドコンセント等を行い,安全を確保した環境で取得したものである.乗車姿勢における脊柱アライメントは,1) 仰臥位と比較して腰椎前弯角がおよそ1/2以下となること,2)立位と比較して胸椎後弯角,特に下位胸椎の後弯角が小さくなる傾向を示すこと,腰椎前弯角がおよそ1/3程度になることが分かった.本年度に得られた結果は,今後学術雑誌や国際学会で公表していく予定である.
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