約2年の調整および事前準備期間を経て本年度より本格的な国際共同研究を開始した。前半(3月から8月)はカナダWaterloo大学においてPatrick Mitran教授とポーラ符号を中心とした符号化技術およびMassive MIMOシステムに関する共同研究を行った。また、パワーアンプ設計の専門家であるSlim Boumaiza教授を交えてパワーアンプの非線形歪が広帯域OFDM信号およびシステムへ与える影響についての研究に着手した。さらに情報ネットワークの専門家であるCatherine Rosenberg教授とともに5GおよびBeyond 5Gにおけるネットワークのスループットを最大化するリソース最適化についての共同研究を開始した。後半(9月から翌年2月)は、米プリンストン大学を訪問し、H. Vincent Poor教授とポーラ符号およびMIMO技術についての共同研究を行った。Waterloo大学およびプリンストン大学での研究を通して、符号長が20万ビット以上のポーラ符号を主要な研究対象とし、理論解析に基づいた修正ガウス近似によるポーラ符号設計手法を提案するとともに、それにより設計されたポーラ符号が通信路容量に近接する特性を達成できることを計算機シミュレーションにより明らかにした。これは、提案手法に基づき設計されたポーラ符号が、簡易な逐次除去復号法を用いることで、現実的な加法性白色ガウス通信路においてもその通信路容量に近接する特性を達成できることを実証するものである。本研究成果は、arXivにおいて公開しており、またIEEE論文誌に済み(現在、改訂版が査読中)である。また上記以外にも、基課題との連携によりMassive MIMOシステムの簡易な信号処理による大容量化に関する研究成果等を得ている。今後、これらの研究成果を学術論文誌論文にまとめ、投稿する予定である。
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