研究実績の概要 |
本研究では,生体と機械を融合させたバイオハイブリッドによる生きている機械”Living Machine”の創成を目指している.この実現には,融合された生体組織を活かすための環境を維持することが重要となる.これまでに,筋細胞をコラーゲンゲル内で培養することで得られた筋アクチュエータについて,有限要素法により拡散方程式を解くことで,内部の酸素分布を評価した.その結果,表層の100マイクロメートル程度までしか十分に供給されていないことが分かった.また,従来より行われている培養皿における静置培養に対し,マイクロ流体デバイスを用いることで酸素供給が改善されることも確認した.本年度においては,この知見を基に,サンターナ大学のL. Ricotti教授と培地循環によるスポンジスキャホールドを利用した筋細胞の3次元培養の研究を開始した. 一方で,初年度に準備した微小力測定装置を用いて,筋アクチュエータの収縮力を向上させるための電気刺激条件の検討をおこなった.また,本検討にあたり,自動で培地を交換し,さらに任意の電気パルスを与えられるシステムを構築した.このシステムにより,電気刺激パルスの与え方について検討した.合計の与えたパルス数が同じになるように,単発パルスを1秒に1回, 10連続パルスを10秒に1回,100連続パルスを100秒に1回行うという条件で刺激したところ,合計パルス数は同じでも連続して与えたほうが,筋収縮力を向上させることがわかった.また,従来報告されている電圧よりも,低い電圧の方が収縮力をより向上させることが示唆された.
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