研究課題
今年度は前年度に引き続き、転写活性型のヒストン修飾であるH3K4me3とH3K36me3及び、転写抑制型のヒストン修飾であるH3K27me3のChIP-seqデータの解析を実施した。父親系統とF1、母親系統とF1でH3K4me3、H3K36me3、H3K27me3のレベルが異なる遺伝子を同定した。片親とF1でこれら3つのヒストン修飾レベルが異なる遺伝子の多くは、両親系統間でもヒストン修飾レベルが異なる傾向が見られた。F1と片親でヒストン修飾レベルが異なった遺伝子の多くは、High parent (ヒストン修飾レベルが高い方の親系統と同レベル) を示すことが明らかとなり、F1特異的なヒストン修飾状態はほとんど見られないことを明らかにした。シロイヌナズナのCol系統とC24系統のF1では、DDM1が機能喪失すると雑種強勢が低下することを明らかにしている。この原因遺伝子を明らかにするために、野生型のCol、C24系統とそのF1および、ddm1変異体のCol、C24系統とそのF1の合計6系統について、RNA-seq解析を実施し、発現変動遺伝子を同定した。発現変動遺伝子について、Col系統を用いて過剰発現形質転換体を作出した。この過剰発現形質転換体は、野生型Colと植物サイズの大きさに差は見られなかった。この過剰発現形質転換体 (Col)と野生型C24のF1は野生型のF1と比較して、植物サイズが小さかったことから、F1でこの遺伝子発現が高くなると雑種強勢レベルに負の影響を及ぼす可能性が示唆された。今後は、この遺伝子が過剰発現することで雑種強勢レベルが低減する原因について明らかにする計画である。コロナ流行により渡航が180日に満たなかったが、遠隔による情報共有によって研究を完了できた。
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