研究実績の概要 |
プロスタグランジンは不飽和脂肪酸より合成され、その化学構造をもとにAからJ群に分類される。昆虫におけるプロスタグランジンの役割はよくわかっていない。本研究では、鱗翅目昆虫のモデルであるカイコよりプロスタグランジンE合成酵素(bmPGES)を発見し、その機能解析を進めている。申請者はすでにbmPGESの基質特異性、組織局在性そしてX線結晶構造解析を明らかにしている。R1年度は、新しいプロスタグランジン合成酵素の候補として同定していたアルドケト還元酵素(AKR6)の基質特異性について詳細に調査した。AKR6は補酵素NADPH存在下において、DL-グリセルアルデヒド、グルコースそして2-ノネナールに対する還元反応を触媒した。補酵素NADH存在下ではいずれの基質に対しても活性を示さなかった。 次に、アポAKR6ならびにAKR6―NADPH複合体結晶の作製を試みた。最終濃度10mg/mLに調製した精製酵素(20mM Tris-HCl, pH8, 0.2M NaCl)を用いて、sitting-drop vapor diffusion 法により20度で結晶化を行なった。その結果、3.5 M Sodium formate, 0.1 M Sodium acetate trihydrate pH 4.6ならびに2.0 M Sodium formate, 0.1 M Sodium acetate trihydrate pH 4.6の条件下で複数のAKR6―NADPH複合体結晶を得た。これらの結晶を用いてSPring8にてdata収集を行ったが、良好な分解能を得ることはできなかった。引き続き、AKR6の補酵素NADPH結合部位ならびに基質プロスタグランジンH(PGH)結合部位について解析を続けていく予定である。
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