研究課題
不動・不活発な状況では、筋群萎縮だけでなく動作や行動の変化が生じることは知られていますが、具体的な検証は少数でした。リハビリテーションの目的は機能的動作・生活の総合的回復であるため、動作・行動の定量的評価が不可欠です。本研究の目的は不動・不使用に対する対応策を疑似微小重力環境・遠心人工重力を用いて検証し、他分野への応用の足掛かりとすることでした。Wistarラットを5群に分け、正常群としての通常飼育群以外は尾部懸垂を用いた2週間の免荷期間、その後2週間の回復期間に置きました。実験群については尾部懸垂のみで高重力介入を行わない無介入群、および3種の高重力介入を免荷期間中に実施し、免荷期間終了後および回復期間終了後に歩行を評価しました。実験開始2週間後、無介入群(高重力介入なし)と比較して2G群(通常重力の2倍荷重を1時間/日)・1.5G群(1.5倍80分/日)では立脚中期の膝・足関節角度が有意に小さく(正常群に近く)なり、4週間後には正常群との差が認められませんでした。これに対し2.5G群(2.5倍48分/日)では2週・4週間後ともに膝・足関節角度が正常群より有意に大きく、歩容異常を抑制する効果は認められませんでした。ラットの行動評価においても同様の結果を得ました。探索行動・学習能力を評価する新奇物体認識試験において、無介入群では学習能力をほとんど示しませんでしたが、2Gおよび1.5G群では2週間後において2.5G群と比較して正常群により近く、4週間後には正常群近くにまで回復しました。また、重力加速度は内耳の三半規管・耳石器官によって感知されますが、本研究の過程で、以前は困難と考えられていた同器官の再適応が特定の条件では可能かもしれないとの知見を得ました。この成果は平衡リハビリテーションとして聴神経腫瘍などによる平衡機能障害への対応策として貢献できる可能性があります。
すべて 2020 2019 2018
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Physical Medicine and Rehabilitation
巻: 101 ページ: 917-923
https://doi.org/10.1016/j.apmr.2020.01.007
JOVE-Journal of Visualized Experiments
巻: 156 ページ: -
10.3791/60267
BMC Research Notes
巻: 12 ページ: 733
https://doi.org/10.1186/s13104-019-4766-2