研究実績の概要 |
不随意運動疾患の異常が線条体ストリオソーム分画の異常に基づくものであることを証明するための研究も米国滞在中行った。具体的にはQ175ハンチントン病モデルマウスにおいて、線条体の免疫染色を3, 6,12か月齢で施行し、線条体ストリオソーム分画の異常が、その病態と関連していることを証明する研究を行った。このデータ解析に関して本年度は開始した。まず、げっ歯類における線条体ストリオソームのマーカーとして用いられているu-opioid受容体 (MOR)に関して検討したところMORの発現は線条体ストリオソーム分画にて月齢に応じて進行性に上昇していた。これをFrontiers in Neuroanatomy誌に報告した。さらに、様々な線条体のマーカーが変化していることを発見し、これらの所見を現在解析継続中である。免疫染色法のより客観的な解析方法として深層学習を用いた方法を開発し、これを用いて解析が進行中である。 深部小脳核にウアバインを注入するジストニアモデルマウスに関しては疾患モデルとして確立した。現在、ジストニアに関しては小脳、基底核双方のネットワークが発症に関連していると考えられている。そこで、小脳に一時病変をおいた疾患モデルでも基底核に異常をきたしているかどうかをまず調べた。深部小脳核にウアバインを持続ポンプで注入しジストニア症状を発症した段階で還流固定を行った。神経細胞活性化の指標であるc-fosを用いた評価を行うと、このモデルにおいても基底核回路内に変化が生じていることが証明された。 現在、ラットを用いた神経トレーシング研究によりストリオソームに投射する部位の同定を継続して行っている。こういった部位が特定されれば、オプトジェネティクスを用いてストリオソーム分画を抑制、活性させて、ジストニアに影響を与えるかどうかを研究する予定である。
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