研究実績の概要 |
近年、運動器障害のために移動機能低下をきたした状態「ロコモティブシンドロームが注目を浴びている。ロコモの進行は介護率を上げる傾向があり、超高齢社会・日本においてロコモ対策は欠かせないものである。 その中でもロコモの代表である変形性膝関節症の新治療法、そして初期型症状の診断マーカーの確定が望まれている。 膜タンパク、ギャップジャンクションタンパク, pannexinのメンバーであるpannexin 3 (Panx3)は歯、軟骨および骨を含む硬組織特異発現を示し、細胞増殖抑制かつ分化の促進の機能を持つ。7量体チャンネルのPanx3は細胞内外の小分子やイオンを透過させ、さまざまな細胞内外のシグナリング活性を行う。しかし、Panx3の通常発生および病態におけるin vivoでの機能は未だ明らかでない。 今回の研究ではPanx3遺伝子欠損マウス(KO マウス)は骨の発生成長異常および骨形成不全を示したことより、通常発生でのPanx3の機能は硬組織の構成細胞の分化の促進であることが証明された。さらに、病態における機能を明らかにするため、膝靭帯切断を行い変形性膝関節症のモデルマウスを作成し、この関節症モデルではPanx3は膝関節軟骨に強発現することもわかった。また、Panx3 KO マウスにおける関節症モデルでは関節炎の減少が認められた。膝における多方向からの過度の圧力による膝関節での過度の摩擦により膝軟骨表面の軟骨細胞がPanx3発現を促進した。また、このPanx3は大量のATPを細胞外に放出し軟骨細胞自身はアポトーシスへと向かった。さらに、局所に放出された大量のATPはマクロファージの遊走を促進し、死細胞の除去のために膝関節部に集積し炎症精細サイトカインの放出を促進することにより炎症を惹起した。そこのことがさらなる関節の組織破壊につながっていくことがわかった。
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